『ザ・メニュー』(The Menu)とホラーコメディ(その1)
作品(The Menu) 2022年 上映時間 107分
監督 マーク・マイロッド 制作 アダム・マッケイ 制作国 アメリカ合衆国
製作費 3000万ドル(約41億円?) 興行収入 7960万ドル(約108億円?)
この作品には、コメディ・ホラーまたはホラー・コメディ映画(comedy horror film)という紹介がある。
コメディだって?
この映画を見てて、「ハハハ」と笑える人はほとんどいないと思えます。日本だと(英米人あるいは英語圏の人々は違うのでしょう)。
また、”コメディ・ホラー”の定義にもよるかも。
日本だと”悪趣味ホラー”のように見る方が多いのでは?
話は、食通タイラーがマーゴットを連れてある島へ出かけることで始まります。
孤島に12人のゲストが有名シェフ(スローヴィク)による最高級のフルコースを味わうために集められるが・・・・ーという設定からして、何か怪しげなものを感じさせます(実は、別に呼び寄せられた者がもう一人いた)。
この12人は、美食家、料理評論家、金持ち常連客、落ち目の映画スター、ビジネス・パートナー3人とスローヴィクの母親(アル中)などから成ります。
島の最高級レストラン”ホーソーン”では、最高級のフルコース・ディナーは悪夢の時間に変貌します。
第3コースではゲストの不倫や横領が描かれたトルティーヤが出され、彼らは不快な時を過ごします。そして、第4コースでは、副料理長が・・・。
ゲストにはパニックが起こりますが、なぜかタイラーだけは平然?としています。
富豪のリチャードはその場を去ろうとしますが、酷い目に。そして、窓から外を見ると、海の方になぜか人がいて・・・・。
第5コースでは、スローヴィクがある報いを受けることになります。また、男のゲストたちだけが必死の鬼ごっこをやることに。
観客によってはバカバカしいストーリーと受け取る人もいるでしょうし、人によっては、恐怖のどん底に突き落とされた気分になるかもしれません。
ただし、約3年前に、ヨーロッパを舞台にしたホラーを既に見ている人は、そこまで恐怖を感じなかったかも・・・。
この夜の出来事は、スローヴィクの料理への情熱を挫くようなことをやった人々への復讐劇でした。
まあ、某レストラン・ガイドで星の数が減ると(星3つが最高点で、星が減るとは店の評価が下がることを意味するというガイドだ)、店の経営が傾いたり、シェフの料理人生命が危うくなるーと言われるくらい、他者の批評や評判は作り手の運命を左右するものです。
スローヴィクの憤懣やるかたない気持ちや行動もそれなりに説得力がある?のかもしれません。
とはいっても、この映画は料理界の内幕物を描きたかったーというわけでは全くないのでしょう。
モノの作り手が一方的に批評されたり、批判されたり揶揄されるーという通常の状態がひっくり返って、それまで受け身だった作り手が攻撃側に回る、という場面を描きたかったのかもしれません。
アメリカ某賞の受賞歴がない人を(シェフに扮する)主演俳優に配したのも、この作品の一種のユーモアかもしれません。